「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草

2017年01月18日

「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草




天草の「野のや」さんは、天草更紗の染元です。

民家の土間で靴を脱いで上がると、店内には中村いすずさんの更紗作品がずらり展示され、購入もできます。


「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草

中村いすずさんが復元された天草更紗



作品に囲まれるようにアンティークなテーブルと椅子が何組か用意され、
椅子に座るとたちまちそこが
カフェ(娘さん担当の「町家カフェ」)になるという寸法。


「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草




狭いながらも落ち着く素敵な空間なので、
更紗作品を眺めながらおだやかな気持ちでおいしいランチを食べられます。
もちろん飲み物だけでもオッケー。

わたしたちは、天草探訪の初日夕刻にこの店を訪れ、
翌日のランチ時に再訪することにしたのでした。


「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草




天草更紗とはなんでしょう。
「野のや」さんのウェブサイトから引用すると、
『「更紗(さらさ)」とは、海外から舶載された外来の模様布のことです。天草更紗は、安土桃山時代に、ヨーロッパや中近東、インドなどの更紗を、長崎出島を通じ、西欧人によって伝えられたとされています。その後、江戸時代に入り、舶来更紗を真似て技を身に付けた職人の手で製作され、庶民に愛される布になっていったとされます。』


「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草




更紗の起源はインドと言われていますが、その流れがインドネシアに伝わってバティックと呼ばれました。
バティックはとても好きなのですが、
肝心の日本における更紗の歴史や位置付けが茫洋としていまいち把握できないままでしたので、
このブログの記事がずいぶん遅れてしまいました。
(訪問は2016年9月下旬です。)

その後少しは理解できたように思うのですが、
とはいえ更紗一般についてはここでは余分のことですので書きません。
ただ、天草更紗についてはどうしても触れておかねばならないことがあります。


「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草




一つには、この家の染元中村いすずさんの仕事についてです。

二日目にはご本人が店におられれて、丁寧なご説明をいただきました。
その言葉からは、誠実な人柄と仕事ぶりがよくわかります。

彼女は、いったん廃れてしまった天草更紗の復活を天草市長等に依頼され、手がける決意をされるのですが、
その実現にいたるまでのご苦労が山積みであったことがわかりましたので、
ここに敬意を表したいと思います。
その一端は、「BUSINESS BATON」というウェブマガジンの2014年01月23日付の記事から垣間見得ます。


「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草




もう一つは、染織工芸家大和田靖子さんの「天草更紗の検証」という労作論文の存在です。
彼女はこの中で、伝統的な天草更紗には、これが天草更紗の技法だ、といえるほどのオリジナリティはなかったと結論づけられています。
(参考「天草更紗の検証」


「野のや」と「町家カフェ」:熊本県天草




天草更紗の復興、と、この天草更紗の検証、とは、一見すると矛盾するように思えますが、
なに、よく考えると、
現在の天草更紗を唯一手がける中村いすずさんが、オリジナリティ溢れる天草更紗を目指しておられるなら、
それで良いことなのでした。
中村さん自身が「平成の天草更紗」と呼んでおられるのはそのあたりの事情を反映されたゆえかもしれません。

更紗には素人の私ですが、
店に展示された作品を拝見して、
その目標は着々と実現に向かっているように思えました。

繊細でおいしいランチを作ってくださる娘さんもおられます。
この先も楽しみですね。


「天草更紗 染元 野のや」さんのサイト

熊本県天草市佐伊津町2212-2





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Posted by gadogadojp at 17:00│Comments(0)グルメショップ
 
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