砂辺にて:その1「思い出のダイビングスポット」

2009年01月24日

『渚にて』というネビル・シュート氏の小説がありました。
第三次世界大戦による核戦争によって絶滅寸前の人類。わずかに生き残ったオーストラリア南端メルボルンの人々が、しのびよる放射能による死をどう受け入れていくのかを描いた小説だったと記憶しています。
グレゴリー・ペックとエヴァ・ガードナー主演で映画化もされました。
小説/映画ともに核と放射能に対する知識の疎漏が多く、名作だったとは思えませんが、たとえば映画では、エヴァ・ガードナーが米国原子力潜水艦を渚で見送るシーンなど、印象的な場面が心に残ります。

舞台は転換して、ここは
沖縄県中頭(なかがみ)郡北谷(ちゃたん)町宮城(みやぎ)の砂辺(すなべ)海岸。

この冬、砂辺でしばらくの時間を過ごしたとき、しきりに映画『渚にて』のいくつかのシーンがフラッシュバックしました。
おそらく、
目前の海と、
外国人の住宅が並ぶ街の雰囲気と、
頭上低く飛び交う米軍嘉手納基地の戦闘機や爆撃機の轟音が私の記憶の深い場所をかきまぜたのでしょう。

砂辺にて:その1「思い出のダイビングスポット」



ここ砂辺は、gadogadoにとって思い出深い場所のはずでした。
ダイビングのCカード取得講習、記念すべき私のダイビングの第一歩は、ここ砂辺の「カリフォルニア・サイド」と呼ばれるポイントでしたから。

ところが、日常生活の中でほとんどこの海の記憶がよみがえりません。
今、当時のログブックを読み直してみると、「フィンをはくのに苦労した」とか「シュノーケリングと大差なかった」とか「ウニだらけだった」とかの味気ない感想が並んでいて、気持ちの高揚が感じられません。
極度に緊張していたのでしょう、きっと。

防波堤堤防から下ればすぐに海。海に入ればすぐに花畑のようなリーフ、という絶好のダイビングスポットを、十分楽しめなかったことはちょっぴり残念です。

砂辺にて:その1「思い出のダイビングスポット」



でも、もう一つ思い出すことがあります。
この砂辺(宮城)の町並みと、まっすぐ続く防波堤の風景に、なんだか気が萎えたような記憶です。
ひとことで言えば殺風景。
大阪湾岸のどこかの埋め立て地から海に入るような気分。
(ここにお住まいの方、ごめんなさい。
二本目では、海の美しさがわかりました。)

今回は、奥様のすすめもあって、懐かしいこの場所を再訪することにしました。
ここでタンクをしょった。
ここで弁当を食べた。
ここからエントリーした。


ありがとう、ワンダーリーフ沖縄の宮田さん。
ありがとう、思い出させてくれた奥さま。
ありがとう、砂辺海岸。

砂辺にて:その1「思い出のダイビングスポット」



とはいうものの、
街を離れる時に住宅地の中を通り、
昔の殺風景さと不自然さ〜
なんとは無しの不安と違和感がまたまた戻ってきました。

現に嘉手納基地が至近の距離にあることがやはり原因でしょうか。
それとも、北谷周辺が米軍の上陸地点であったことが?

砂辺にて:その1「思い出のダイビングスポット」



帰宅して数週間、
どうしても気になって、ここ砂辺の歴史を調べてみることにしました。
まだわずかな成果しかあがっていませんが、

うかつ過ぎることに、
ここは数十年前まで、イノー(珊瑚礁内の池)であったことをようやく知りました。

地形の不自然さはそのせいなのでした。
埋め立てた「おかげ」で、初心者でもリーフに軽くたどりつけるダイビングスポットに変貌したのですが、私の不安感の源の一つがわかったように思います。

なお、その過程で、この海のサンゴが壊滅状態から徐々に復旧しつつある様子も学ぶ事ができました。
砂辺のサンゴを見守る会のHPのおかげです。
ありがとうございました。




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Posted by gadogadojp at 13:30│Comments(0)エリア
 
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