死者の寺:モンキーフォレスト

2009年06月14日

死者の寺:モンキーフォレスト




ウブドのモンキーフォレストには、死者の寺=プラ・ダラム・アグン・パダントゥガル(Pura Dalem Agung Padang Tegal)があります。
もちろんヒンドウーの寺院です。
森の中を散歩していると、まずは迷わず見つかるはずです。
しかし、やや閉鎖的で不気味さただよう印象があるのでしょうか、敬遠される観光客もおられるようです。


死者の寺:モンキーフォレスト




けれど、モンキーフォレストの神秘の源の一つは,確実にこの寺院からかもしだされる空気だと思われます。
ウブドの街に、ただ買い物を楽しむだけに来られる方は少ないでしょうから、
参拝せずに済ますにはもったいない特別の場所です。


死者の寺:モンキーフォレスト




今回私たちはバリの正装で訪問しましたから不要でしたが、
軽装で来られた方には、寺院の入口でサロン(腰布)とスレンダン(帯)を無料で貸してくれます。


死者の寺:モンキーフォレスト




さて、死者の寺とは何でしょうか。
間苧谷榮氏によれば、(出典)
バリの一つ一つの村には、
プラ・ダラム(Pura Dalem)<死者の霊のための寺>、
プラ・プセ(Pura Puseh)<村の寺=村の発祥の寺>、
プラ・バレ・アグン(Pura Bale Agung)<神々が集う寺>、
の三種の寺院が必ず建てられています。


死者の寺:モンキーフォレスト




間苧谷氏は、この三種の寺院の信徒集団が、婚姻/相続/共同作業などの『慣習村(desa adat)』を形成すると言います。
農業のための「村」、政治的単位としての「村」、カースト別の「村」とは別に、バリ人の日常生活と祭祀の単位の母体となっているのでしょう。
(バリニーズは最大四種の村に所属していることになります。)


死者の寺:モンキーフォレスト




それはつまり、
葬儀の際にもこの信徒集団が母体になるということに他なりません。
その葬儀は、ここ死者の寺で行われます。
そしてどうやら、
死者と地下、そして悪霊とは近しい関係のようですから、
寺院の中には確かに不気味な石像や絵が多く飾られているのです。
子どもを食べるランダ(正確には、ランダに変身する以前)の像はその最たる例です。


死者の寺:モンキーフォレスト




しかしながら、
悪霊はもちろん恐ろしいのですが、
別の記事で書いたように、バリでは(ヒンドウーでは)、善と悪はつねに争いながら拮抗していると考えます。
どちらか一方の完全勝利はありえませんし、もしあればこの世のバランスが崩れ、たいへんな事態が出来します。
だから、
逆説的に言えば、人間は悪霊だってきちんと敬意を払って祀らねばならないのです。


死者の寺:モンキーフォレスト




幼児を食べるランダは恐怖の対象ですが、
しかし、幼児を食べなければならないランダの存在は認めるのです。

死者の寺は、つまりはそういう場所です。
死霊を敬遠/軽視してはならないのです。



2015年夏の時点では、境内にはいっさい入れないようになっていました。

死者の寺:モンキーフォレスト




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Posted by gadogadojp at 18:30│Comments(0)エリア
 
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