酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿

2011年09月30日

この夏の丹後/若狭の一人旅は、天候の関係で与那国島から急遽行き先を変更した旅行でしたので、いっそ行き当たりばったりの旅をしようと考えたのでした。
私としては、趣味の古代史探究の補強のつもりでしたので、その地の空気に触れ、地形を感じれば良かったのです。

ただ、宿だけはそうはいきません。なぜなら旅の中で、決定的に時刻と時間を制約され、最も出費がかさむ要素ですから。
つまらない旅館や民宿に泊まるくらいなら、いっそ味気ないビジネスホテルに泊まるのが賢い方法だと私は考えています。
また、今回の旅では気侭に行動することになりますので、素泊まり、または朝食だけの宿泊が可能な宿をさがすことにしました。


酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿



このように考えて、まずは宮津周辺の安宿をさがしたのですが、短い時間(出発前夜)の宿選びでは、うまく見つけることができません。

ようやく見つけたのが「酒鮮の宿 まるやす」です。充実したHPから直感的に良い宿だとわかりました。
近くに立寄り温泉があるので、浴室にコストをかけず、かわりに酒や料理その他にこだわっている個性的な宿、という説明が印象的でした。こういう宿の店主はきっと濃い〜方に違いありません(笑)。そういう宿、慣れてます(笑)(笑)。

またこの宿は夕食抜き宿泊も可能なようです。一人旅応援プランも用意されています。このあたりも、今回の旅では決め手になりました。
出発当日の朝に電話して、夕食不要だが空き室があるか尋ねた所、快く承けてくれました。決定です。到着は19時半と決めました。


酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿




丹後半島から天橋立に向かう途中の回転寿し「弁慶」で夕食をとり、宿に着いたのは予定時刻通り。歓迎を受けて二階の部屋に通されます。

部屋は六畳。簡素ですが清潔です。タバコを吸おうと窓を開けると、暗くなった山景色の手前に駅のホームが間近に見え、かわいらしい北近畿タンゴ鉄道の車両が停車しています。天橋立駅のプラットフォームです。
この景色が楽しめる部屋は両隣を含めて数室だけの特権のようです。まもなくぷわ〜んといい音を鳴らして一両編成の電車が発車していきました。いいぞ。

酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿
この写真は、翌朝に部屋の窓から撮影



宿のチェックイン時に奨められて割引券を購入していましたので、近所の立寄り温泉「智慧の湯」に行くことにしました。半露天風呂もある、和風な内装の落ち着いた湯で汗を流しました。

「智恵の湯」
ナトリウム-塩化物泉
平日14~22時、土日祝12~22時
0772-22-1515
北近畿タンゴ鉄道天橋立駅そば
水曜日定休
駐車場有(広くはありません)

酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿

「智恵の湯」は天橋立駅に隣接しています


風呂から戻りました。
さあ、店主自慢の日本酒を1〜2杯飲んで寝てしまいましょう。
そのため「珠庵」というスペースに行こうとしたのですが、少々探しました。これも店主の思う壷なんでしょう。
客室に見える一室に「珠庵」と書かれてありました。やれやれ。
室内は足を伸ばせる造りの和風(座敷)バーカウンターだけの小さなスペース。
正面壁の大きなモニターには店主が撮影した美しい天橋立風景が次々と。
立派なオーディオからはJAZZ。
徹頭徹尾こだわってますね。


酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿



先客は東京から来られたという女性客が御一人。こちらはまだお食事中のようです。
別に食事場所もあるはずなのですが、「珠庵」というこのBARで食事が出されることもある、ということですね。
失礼ながらちらりと料理を見せていただきましたが、なかなか美味しそうに見えます。
夕食は他の宿よりも遅く始まる、ということですので、少し無理すれば間に合ったかもしれません。残念。

特別な酒の肴の用意は無さそうなので、日本酒を飲みたいとだけお願いしました。
カウンターの向こうのご主人が一瞬考える間を置かれたようなので、
選んでもらうヒントのつもりで「私がふだん好んで飲んでいる酒は、黒牛、菊姫…」と言い始めると、酒匠(さかしょう)の資格を持つご主人は私のセリフを途中で遮って「いやあ、ここでしか飲めない酒を…」。
これこれご主人、親切心が強過ぎて人柄が濃い〜人に慣れてない客なら、「客はオレだっ」と怒りますよ(笑)。

私が予想、いえ期待した以上に日本酒好き、教え好きなご主人だったので、ここはありがたくお任せしましょう。

私の奥様の造語に『濃い人サミット』という架空のイベントがあります。
今までこの空想サミットのメンバーには、(まことに失礼かつ勝手ながら)座間味「ダイブイン浜」、国頭村「海山木」、紀伊長島「美鈴」の各ご主人や、那覇「てだこ亭」の飯塚シェフ等々錚々たる方々が参加(?)してくださっているのですが、
彼女がここ「まるやす」に宿泊すれば、きっとこちらのご主人も即座にメンバー入り確実です(笑)。


酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿




うっかりしたことに、いえ予想通り一杯目の酒の銘柄は忘れました。
料理に合わせたチョイスではありませんので、酒それ自体で独り立ちできるものを選んでくださったのだろうとわかります。
日本酒が好きな客なら満足できるだろうと思われる、しっかりした骨格がある酒でした。

二杯目は、お願いして写真を撮影させてもらいました。秋田の「天の戸」の純米大吟「夏田冬蔵(なつたふゆぞう)」生酒です。
「天の戸」を耳にしたことはありましたが、初めての機会。
ましてその大吟とは。
ご主人は価格を告げて了解をとられます。
「天の戸」を醸造しておられる浅舞酒造のHPはこちら。なかなかこだわりの酒です。

この酒は文句無し。吟醸の清らかさとBODYの強さを併せ持って見事。
何よりも、わざとらしい果実臭が微塵も無いところが媚びてなくていい。

酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿



酒に満足した後は、明日の珈琲の予約!をお願いして、この日は休むことにしました。
珈琲の予約とは……

酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿




ご主人のこだわりは、宿、料理、酒、写真、音楽だけにとどまりません。
なんと、珈琲は前日に予約があった分だけ焙煎しておき、それを翌日に供するという完全主義ぶり。
当然、焙煎から時間がたったものとの比較はできないのですが、
焙煎から日が経つにつれて酸化・劣化していくことは私もわかりますから、
旅先でこのような心遣いがあることは、もう何とも豊かな気分になれます。
ブラックが標準料金で、ミルクや砂糖を使うとこれにプラスされるという合理的な料金体系?も、笑ってしまうほど明快です。

コクのある珈琲は水出しのような美味さでしたので、
次回は二杯分頼んでみようかな。


酒鮮の宿 まるやす:天橋立の個性派小宿




朝食の献立自体は一般的な旅の宿のそれと同様です。どなたにも馴染めるでしょう。
ただ、干物はもちろん、野菜のレベルが大変高く、おひたしおかわり!と叫びたくなりました。
石垣島の「てぃだぬふぁ」のおいしい野菜の朝食を思い出しました。

さて私は若狭に向かって出発せねばなりません。
このこだわりの宿について、実はまだ語り足りないことがあるのですが、
それはまた、次回宿泊の折までとっておきましょう。

なお、朝食前に、前夜に教えていただいた天橋立ビューポイントに行ってきました。
でもそれは宿泊客だけのお楽しみにしておきましょう。

そうそう、出発前に、奥様でしょうか、女性スタッフと短い会話をすることができました。
濃い〜御主人のそばには必ず、気だてと人当たりが良く、なおかつしっかり者の女性(たいていは細君)がついておられる、という法則はここでも立証されました(笑)。

1から10まで放っておいてくれ、という旅を望んでおられる方でないなら、
また、親切の圧力に屈して小さくなってしまう性格の方でなければ、
この小宿はとびきりの時間を提供してくれるでしょう。




「天橋立 酒鮮の宿 まるやす」
〒626-0001京都府宮津市天橋立駅前通り640-3
TEL 0772-25-5001(予約等)
宿のHP

天橋立駅を出て右方向に歩くとすぐの便利な立地です。
駐車場完備ですが、宿からは駅前を越してさらに数分歩きます。

料金はプランによって異なります。
たとえば8畳の部屋に二人で<お魚満腹プラン>を頼むと、12600円/一人になるそうです。



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Posted by gadogadojp at 18:30│Comments(0)宿/ホテル
 
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