「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

2020年10月01日

「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

山伏装束


長文です。

山伏そばと銘打つ「拝庵(おがみあん)」を訪れたのは1月13日。海外からの報告はあったものの、日本国内ではまだ新型コロナ感染者は発見されていない時期でした。(国内での初感染確認はその三日後)

そのロケーションがあまりに気に入りましたので、近いうちに必ず再訪しようと思っていたのですが、その後のご存知の情勢で、今までのびのびになっています。和歌山県内の感染者がゼロに近い今、そして新蕎麦の季節になった今、このままでは時機を逸するので、とりあえずご紹介することにします。


「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

もりそば


「とりあえず」と書いた意味はこうです。
この「拝庵」の蕎麦の真骨頂はおそらく”山伏そば”という十割蕎麦にあります。ただ私たちがうかがった冬は、多くの客が冷たい蕎麦よりも温かい汁そばを注文する時期です。ご存知の通り汁そばには麺が伸びにくい二八から五々くらいの配合が適しています。ですからこの日は十割蕎麦の用意がありませんでした。(予約の時にその旨伝えておくと打っておいてくださるそうです)そういうわけで、捲土重来を期しているのです。


「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

店の看板(奥様撮影)


さてそういう経緯で、少し無知なまま席だけ予約して「拝庵」を訪ねました。
私の車のカーナビは古いのでこの店が表示されないため、地図と店のHPの親切な道案内を頼りに向かいました。熊野本宮方面から国道168号線を2㎞ほど北上すると、”伏拝”方向への分岐点が左方向にあります。これを進んで国道から離れ、道なりに(分岐から)3km強進むと、”伏拝口”バス停(≠伏拝バス停)があり、左折するヘアピンカーブがあります。ここまでは走りやすい二車線路です。左折後は1.5~1車線の狭い道になり、運転初心者の方には対向車が来たらどうしようと心配になりそうです。でも距離にして1.3kmほどですから大丈夫、ゆっくり進んでください。やがて左手に数台分の駐車場が見えます。到着です。振り返ると雄大な果無(はてなし)山脈が連なっていて、身惚れてしまう景観です。店はここから2分ほど先です。看板があるのでわかります。ただし店までは20段以上の石段がありますから、車椅子では向かえません。

「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

奥様撮影


石段を上ると左右正面に家屋があります。左が厨房のようなので声をかけると、作務衣姿のご主人が、正面の階段を上がって二階の部屋に上がってくださいとおっしゃる。部屋に入ると、、おお何と、ここは山伏部屋?ではないですか。祭壇があり、引敷(ひっしき、毛皮)や黄色い鈴懸など山伏装束が飾ってある。コロナ禍の今、この部屋を使っておられるかどうかはわかりませんが、ここを拝見するだけで価値があります。座席は畳席です。山伏については本記事の最後に簡単に説明しています。


「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦




私たちは2200円のそば膳コースでお願いしました。前菜、だご汁、蕎麦のコースです。蕎麦はもちろんメインですが、だご汁も必食です。店のHPの解説によれば、”自家栽培の原木きのこと、季節の野菜がたっぷり入ったお汁に、そばがきが入っています”とのこと。この日は汁とそばがきが別に盛られていました。しばらく時間ををおいて、もり蕎麦が運ばれてきました。さらにそば湯が。運び手は奥様でした。

そばをお代わりしましたが、少々待つことになりました。私たちは時間に余裕があったので、子供たちの遊び声が聞こえる良い雰囲気を楽しんで待っていましたが、おいそぎの場合は先に注文しておくのが良いでしょう。

部屋の窓が大きく、光の強い日だったため、写真が綺麗に撮影できなかったのが残念です。      


「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

ここから三枚は奥様撮影写真


「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦




「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦




「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

自家製漬け物もgood


帰る時間になり、厨房の方に立ち寄り支払いを済ませました。そこでようやく気づいたのですが、厨房横に簡易な建物ながら展望の良い明るい大部屋がありました。椅子席です。畳席が辛い方はあらかじめこの席をお願いしておくといいでしょう。

すっくとしながらも気さくな店主と少しばかり会話をし、帰ろうとすると驚きの光景が!もてなしが!
店主ご自身が山伏ですので、なんと螺貝(ほらがい)を吹いて、道中の無事を祈ってくださったのでした。
螺貝を聞くのは数十年も前の吉野の蔵王堂の山伏集会以来で、心が震えました。
この店で料理を食べることは、山伏を通じて山の霊気をひとすくい頂くことなんだなとわかりました。

再訪を、捲土重来を期していると最初に書きましたけれど、蕎麦以上に店主の吹く螺貝を聴きたいのかもしれませんね。
なお、他に客がいないなどの手の空いている時だけ吹いてくださるそうです。そこはご配慮ください。



「拝庵(おがみあん)」:本宮伏拝王子の山伏蕎麦

写真のブログ掲載許可を頂くのを忘れてしまいましたのでお顔を隠しております。ご無礼お許しください。


「拝庵」のデータ:お店のホームページからの抜粋です

通常営業:土日祝 11:00~15:00
(不定休ですので、事前にご連絡下さい)
平日は要予約(前日まで)
※ご予約はお電話にてお願い致します。直前のご予約のキャンセルは、キャンセル料を頂きます。(前日50%、当日100%)
臨時休業有。詳しくはFacebookをご覧ください。
※2月、6月はオフシーズンでお休みとなります。

〒647-1743
和歌山県田辺市本宮町伏拝170
TEL 0735-30-0435(中根)


※山伏とは?(一般的な説明と私の解釈とが混在しています)

山伏(やまぶし)とは山に伏す者。山に潜み、苦行して、山の霊力を我がものとするべく励む者。
すなわち、修験者(すげんじゃ)。行者(ぎょうじゃ)。
山伏は山に伏し、山を駆け、山を飛び、山に祈る者。
すなわち、山伏は天狗たらん者。

日本列島に国家などが成立する以前、列島に住む者の大部分は山(と岩と森)に依拠して生きてきました。
山は川を産み、木の実や獣を育てます。
山は火を吹き、山はすべてを押し流します。
山は恵みも懲らしめも与える”カミ”だったのです。
山の霊力を知りたい、山に愛されたい、山の秘密を知りたいと原初日本列島人のみんなが願っていました。
やがて平地に農耕が始まり、国家が生まれると、山はしだいに日本列島人の心から疎まれ始めますが、
しかしそれでもなお、俗世から離れてでも、山にこそ”カミ”はおられる。”カミ”を知りたい。”カミ”の霊力を身に付けたいと願う人々は存在し続けたのです。
山伏はその人たちの心の末裔なのです。




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Posted by gadogadojp at 22:30│Comments(0)グルメ
 
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