与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」

2012年01月21日

与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」

東崎(アガリザキ)


①初めに

2011年12月25日、与那国島を初めて訪問しました。

与那国に行きたいと思いついたのはもう7〜8年前になります。
TVのDr.コトーではなく、海底遺跡の写真を見たことがきっかけでした。
今回ようやく訪問できることになって、島に関する多少の予習はしたのですが、
やはり脳内関心の大部分は海底遺跡に占められていました。

実際に足を踏み入れてみると、海底遺跡だけでなく、
島全体になんとも魅力に溢れた空気が充満していて、
その磁力は私をとらえました。

帰宅して、ようやく島の歴史、伝承、歌など民俗全体を本気で学びたくなったところです。
「まず行ってみよう」というのが私のいつもの行動ですので仕方ないのですが、
与那国島理解はまだこれから、と言い訳を述べておきます。
ここでは生半可な考察はやめ、現時点での疑問を投げかけながら、
なるべく観光客の視点を大切にして、与那国島を紹介して行きたいと思います。



与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」

RAC:琉球エアコミューター


②与那国に行くには

日本国の領土の最西端に位置する孤島与那国島に行くには、
(2012.1現在)

航空機なら、石垣空港からRACが毎日1便(30分)
      那覇空港からRACが週4便 (80分)   

船舶なら、 石垣港から福山海運のフェリーよなくにが週2便(4時間半)   

それぞれ通じています。これ以外の定期交通はありません。
飛行機は約50人乗り。フェリーは500t弱の小型フェリーですから、それぞれが旅行者だけで満席になったとしても、定期便では一日平均150〜160人程度の観光客を運び込むことしかできない計算になります。

なお、フェリーの片道運賃は3460円。
RACの航空機の往復割引を使って片道7150円。
ですから、料金の差は明らかですが、フェリーの場合、船に強くない方は船酔いに注意すべきでしょう。



与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」
祖内の「民宿おもろ」:もちろん『おもろ草子』からの命名


③与那国の宿を決めるには

私が重宝している沖縄情報の総合サイトには、
美ら島物語
離島ドットコム
の二つがあります。

後者に掲載されている与那国の宿の数は、ホテル(一軒)から素泊まり民宿まで含めて全部で36軒。
この中から旅行者の好みや予算、口コミなどを思案して決めることになります。

私は自分自身の趣味嗜好から「民宿おもろ」さんを選びました。
結果的に大正解だったのですが、それは旅人個人個人が何を求めるかによって変わってくること。
ここ与那国にリゾート感を求めて来られる旅行者はいないと思うのですが、
そういう意味で不思議だったホテルが「アイランドリゾート与那国」。
周囲の風景から浮き上がっています。
海が近いわけでもない空港目前の立地に、なぜこのような大きなホテルが?と違和感を覚えました。

調べてみると案の定問題を抱えています。
違法に建てられたホテルであることには間違いが無いようです。
沖縄本島の企業の利権がらみの疑いが濃厚です。
間もなく廃業するのか、あるいは自衛隊宿舎に転用か、など様々な噂がとびかっている模様。
初見で私は西表島の「ニラカナイ・リゾート」を思い出したのですが、これはいい線をついていたようです。

それにしても、②で見たように、旅行者が最大160人/1日とするなら、宿一軒平均の宿泊客は4〜5人となります。連泊客が特定の時期に集中することを勘案するとそう単純には考えられませんが、島内の宿泊施設の経営が楽でないことは十分に想像がつきます。
及ばずながら、まったく及ばずながら、
今後私も少し島の未来のためのアイデアを練りたいと思います。



与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」

一輪だけ残っていたアカバナー(ハイビスカス):ハマボウはハイビスカスの仲間です


④与那国という呼び名

前述のように勉強不足のままとりあえずこの島に着いた私です。
この島<よなぐに>の別名が<どなん>だということをおぼろげにわかっていた程度でした。
島で、そして帰宅後、少し調べました。

<どなん>の意味を当て字<渡難>で説明する記述に多数出会いました。
その気持ちは通じるのですが、無理がありすぎると感じました。
時代性からも、命名のセンスからも不自然です。
<土南>説も散見しましたが、なおさら不自然です。
<土根>説も見かけました。これも漢語/漢字に依存する点で納得いきません。


さて私はまず考えました。
琉球/沖縄語の発音で特徴的なことは、内地と母音の発音(あるいは数)が異なることです。
オキナワはウチナー。
厳密には島ごとに異なるようですが、我々内地人が聞くと、おおむねアイウエオがアイウイウと聞こえます。これは島唄でおなじみです。
ならば、ヨナグニはユナグニと発音する(聞こえる)のではないでしょうか。

ユナ、ユナ、ユナ…まさか湯女じゃない、ユナ、ユナ…
楽しく空想していきますと、ユウナに思い当たりました。
ユウナとはハマボウ、オオハマボウ、サキシマハマボウ、そのいずれかの沖縄での呼び名。

秋篠宮家第二女子・佳子内親王の「お印」のオオハマボウ?
散る頃には夕焼けのように赤く染まるユウナ?

与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」

     オオハマボウ:wikiより


そこで「与那国 ゆうな」でネット検索をしてみますと、
沖縄・与那国島サトウキビ刈り援農隊(援農舎)の「ゆうな通信」の中に、このような文章がありました。全文引用させていただきます。


「どなん」の語源
 与那国島のことを地元の人は「どなん」あるいは「どなんつぃま」と呼んでいる。その語源について池間栄三著「与那国の歴史」は、いろいろの説があるとしながらも、もっとも有力なものとして次のように書いている。
 今日、最も有力な説は、「ゆうな」の木にヒントを得たものである。「ゆうな」は琉球諸島の至る所の海岸に自生している喬木である(学名オオハマボウ)。琉球の地名の与那原、与那嶺、与那城は「ゆうな」に関連して名付けられたものと思われる。与那国島にも与那原、与那元などの姓があるが、地元ではこれを「どなんばら」「どうなむた」と言っている。ことに与那国島の旧邑であった「どうなんばら」邑の根所は、現に「どうなんばら」家の拝所になっている。この「どうなんばら」も与那原と書く。
 近くの石垣島では、与那国を「ゆのおん」と言っている。その「ゆのおん」は「ゆうな・ふん」の転訛であるといわれ、「ふん」は組を意味する言葉であるから、「ゆのおん」は「ゆうな」の群生を意味するものであると言われている。与那国島の方言には濁音が多いから、「ゆ」が「どう」の発音となって、「ゆうな」が「どうな」になった訳である



私の推測が当たっていたかもしれません。でも、この文章を良く読むと、これは意外にも、ドナンという名それ自体、ユウナからの転訛とも読み取れます。ええっ?と驚く私。
YがDの発音に?

そこでさらに検索を加えていきますと、ありましたありました。
ウチナーグチ(沖縄語)の範疇の中でも与那国言葉の特徴として、ヤ行がダ行に変化していると書かれてあります!
ならば、ユウナ→ドゥナ(ン)と発音されてもおかしくないことになります。
出典:wiki「与那国方言」
出典:wiki与那国方言会話集

なんだ、そうだったのかあ。
でも、どうして与那国島の各種紹介文にはこの説明がなかったのだろう?
定説とはいえなくても、私には十分納得のいく説明が得られました。
同時に、沖縄全体として地名や人名によく見かける<与那>の文字は、美しいユウナの花が語源であった可能性を知り、嬉しい気持ちで一杯です。


与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」



さて、<与那国>の呼称ででもう一つ謎が残っています。
上記「民宿 おもろ」の女将がいみじくもおっしゃいました。
『ヨナグニは国ですから』と。

そうですよね、この島は与那島ではなく、与那国島なんです。
南西諸島で他に国がつく島と言うと、私には粟国島しか思い当たりません。
歴史の中に答えが見つかるかもしれません。
もちろんこの<国>は漢字で考えるべきでないのかもしれず、
<クニ>に近い発音のウチーナーグチの転訛である可能性も十分にあります。

でも本日の所はこの疑問を投げかけるだけにとどめ、
今後の宿題にして考えていきたいと思います。



与那国島紀行〜その1「どなんに行きましょう」

久部良岳

         以下、次号に続きます。



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Posted by gadogadojp at 21:30│Comments(2)旅行
この記事へのコメント
めーじむらさん、こんにちは。
そうでしたか、ロケに出会われましたか。
羨ましいです。
わたしたちもまた行きます。
Posted by gadogadojpgadogadojp at 2013年08月07日 17:15
私共夫婦はダイビング主で与那国島へ参りました。
初日にタクシーであちらこちら回ってもらい、2日目はダイビング。
3日目は「ゆる~り」の予定でしたがもう一度島を回ろうって事でレンタカーで一回りしましたが、ちょうど「Dr.コトー(続編?)」のロケ中でした。
偶然「一億円の墓」も拝見しました(≧▽≦)☆
日本最西端の島ですのでもう一度訪れたいと思っています。
Posted by めーじむら at 2013年08月07日 09:14
 
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